現在、世界で猛威を奮っている新型コロナウィルス感染症(COVID-19)を引きおこしているウィルスSARS-CoV-2と、コウモリ類の関連についてお話しします。コウモリが原因でCOVID-19が引き起こされた、という話が広がり、世界ではコウモリ類を駆除する動きもあるようです。しかし、そんなことをしてもパンデミックは終わりません。COVID-19は人から人へ伝搬する感染症ですので、コウモリを駆除してもパンデミックを終わらせることはできないのです。
現在科学者たちは、SARS-CoV-2が初めにどのように人に伝わり、そしてパンデミックを引き起こしたか、ということを追跡しているところです。これまでに明らかになっているのは、SARS-CoV-2と共通の祖先を持つ(親戚関係にある)コロナウィルスがコウモリ類やセンザンコウから見つかっている、という事実です。しかし今のところ、SARS-CoV-2がコウモリ類から見つかったということはありません。
コロナウィルスはコウモリ類を含め多くの野生動物から見つかっています。ヒトが日常的に感染する(してきた)ウィルスも知られています。多くの場合、ヒトと野生動物が直接触れ合わなければ、互いにとって未知のウィルスに出会うことはありません。現在、コウモリ類の研究者は、IUCNコウモリ部会より、SARS-CoV-2をコウモリ類に感染させコウモリ類の大量絶滅を防ぐために、または人からコウモリ類にSARS-CoV-2が感染し、その後脅威となるウィルスとなって人に再び戻ることのないように、洞窟などのコウモリのすみかに入って行うような捕獲調査を必要最小限にとどめる事が求められています。また、どうしても洞窟などのコウモリの住処に入って捕獲調査を行わなければならない場合、調査者は自分自身の健康チェックを行った上で、防護服やメガネ、マスク、手袋等の着用をおこなって入ることが求められています。判断はそれぞれの研究者に委ねられていますが、研究者は節度を持って行動すべき時だと私は考えています。
ところで、何故、コウモリ類を守らなければならないのでしょうか?
それは、地球にとって、そして人類にとって、コウモリ類が非常に重要な役割を持っている生態系の一員だから、という言葉に尽きます。つまり、コウモリ類は、虫を食べたり、花粉を媒介したり、種子を分散させたり、といった生態系サービスをおこなって地球を健全に保つのに役立っている非常に重要な生物だからです。
コウモリ類は地球の生物多様性や生態系を良い形で維持するのに必要不可欠な存在である、ということ、私たちヒトも地球上の生態系の中で生きている、ということを忘れてはいけないと思います。
2020.6.30
河合 久仁子
コウモリとコロナウィルス について詳しく知りたい方、最新情報は以下のリンクを見てください。
BAT Conservation International (日本語訳 滝川環境フォーラム)
コウモリの会(声明 コウモリの糞に困っている人向け小冊子)
進化生物学者の長谷川政美先生によるウィルスと進化の話
コロナウィルス についても詳しい解説があります。
(毎週水曜日夜更新予定)
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